2017/03/29

言葉と表現と私

普段から読書が好きなのだが、ここ1週間はとにかく本ばかり読んでいた。
この1週間で読んだリストは以下の通り。


怒り(吉田修一著・中公文庫)
女のいない男たち(村上春樹著・文春文庫)
漂流老人ホームレス社会(森川すいめい著・朝日文庫)
愚行録(貫井徳郎著・創元推理文庫)
リバース(湊かなえ著・講談社文庫)
統計学が日本を救う(西内啓著・中公新書ラクレ)
最下層女子校生 無関心社会の罪(橘ジュン・小学館新書)


今回はドラマや映画の原作になっているものが多かった。
しかしながら、私は既に映像化されたそれを見ていない。

書かれた言葉を追いながら、情景を思い浮かべることが好きだ。

読むことで、自分の頭の中に映画が出来上がっていく。
緻密に書かれている部分はシーンに反映し、そうでないところは自ら想像してみる。
小説だけでなくドキュメンタリーや学術書でも同様に映像化する。
自分にしかできない、自分にしか見ることのできない作品を堪能する、それが私にとっての読書の楽しみである。


実は今回、恥ずかしながら村上春樹氏の作品を生まれて初めて読んだ。
懇切丁寧な筆致に感動した。


言葉の選び方や表現方法にはその人のセンスが滲み出る。
最近感動を覚えた表現は書籍ではなく、歌の詞であった。
バックナンバーというバンドの「ハッピーエンド」という曲である。
以下に歌詞を引用する。


さよならが喉の奥に つっかえてしまって咳をするみたいに ありがとうって言ったの
次の言葉はどこかと ポケットを探しても見つかるのはあなたを 好きな私だけ
平気よ大丈夫だよ 優しくなれたと思って願いに変わって 最後は嘘になって
青いまま枯れてゆくあなたを好きなままで消えてゆく私みたいと手に取って奥にあった想いと一緒に握り潰したの大丈夫 大丈夫
今すぐに抱きしめて私がいれば何もいらないとそれだけ言ってキスをしてなんてね 嘘だよ ごめんね

こんな時思い出す事じゃ ないとは思うんだけど一人にしないよって あれ実は嬉しかったよ
あなたが勇気を出して 初めて電話をくれたあの夜の私と 何が違うんだろう
どれだけ離れていてもどんなに会えなくても気持ちが変わらないからここにいるのに
青いまま枯れてゆくあなたを好きなままで消えてゆくわたしをずっと覚えていてなんてね 嘘だよ 元気でいてね

泣かない私に少しほっとした顔のあなた相変わらず暢気ね そこも大好きよ
気が付けば横にいて別に君のままでいいのになんて勝手に涙拭いたくせに見える全部聴こえる全て色付けたくせに
青いまま枯れてゆくあなたを好きなままで消えてゆく私みたいと手に取って奥にあった想いと一緒に握り潰したの大丈夫 大丈夫
今すぐに抱きしめて私がいれば何もいらないとそう言ってもう離さないでなんてね 嘘だよ さよなら
バックナンバー 「ハッピーエンド」作詞 清水依与吏 

映画の予告編で何度か耳にしたことがあったのだが、私の耳を捉えたのは、今年1月のいぶすき菜の花マラソンの前日に立ち寄ったスーパーでのこと。
店内で流れていたBGMの「♪大丈夫 大丈夫」というメロディが印象的だったので、改めて聴いてみたいと思い調べてみたところ、この曲だとわかった。
切ないメロディもさることながら、歌詞がとても秀逸であることに気づいた。
付き合っていた彼に別れを告げられた女性の彼に見せる表の面と心の内である内面が上手く表現されているのである。

私が特に気になったのは次の2つのフレーズである。

1.平気よ大丈夫だよ 優しくなれたと思って願いに変わって 最後は嘘になって

彼に強がって放った「平気よ大丈夫だよ」という言葉。
同時に自分に言い聞かせていたのだけれど、だんだん自信がなくなって、結局ちっとも平気でも大丈夫でもなかった、という本音。



2.気が付けば横にいて別に君のままでいいのになんて勝手に涙拭いたくせに見える全部聴こえる全て色付けたくせに

ありのままの私を受け入れてくれた彼のおかげで毎日の生活がとても輝いていたように感じられた。
彼がいてくれたから…。


彼にとって最後まで物分かりのいい「いい女」でいたい女性の気持ちが手に取るようにわかる。
切なすぎる。

back number「ハッピーエンド」MV(Short )「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」Ver.